今月の表紙「有情冬樹」
諏訪湖周辺には柳あり、桜あり、それぞれに樹の趣がある。中でも、鴨池川河口の水辺には、根元まで湖水につかり自生している柳がある。樹形も良く、周りの葦、仲間とともに共生している。
その姿は、独り立ちつくす孤高の一樹にも思える。
瞬間、四季を通し対話したい衝動に駆られた。
まさに「諏訪湖に一樹あり、諏訪湖に有情あり」である。
2008年の冬。
この年、諏訪湖は氷点下10℃を下回る日々が続き全面結氷、待望の御渡りも現れた。降雪により、湖面は白色世界に変わり雲は重く垂れ込み、あたかも、大海原水平線の如くである。一樹を囲む葦の群れには、まだ穂も残り、葉も多い。これから氷雪原をわたり吹き付ける烈風に、身をさらし細めるのであろう。
私は、一樹に問うた。
「諏訪湖は、なぜ君に、厳しく辛くあたるのか」
一樹は黙して語ろうとしない。
諏訪湖は、生命あるものに試練を与えている。
撮影地 諏訪市鴨池川河口
Nikon D3、24-70mmF2.8G ED
F/5.6、1/3200、-0.7補正、ISO200
(写真・文 伊藤邦美さん)
