将来の諏訪地域の産業ビジョンを形成する上で重要となる人材の育成を目指して、平成20年11月から当所らで実施してきた人材育成講座すわ地域「おこし塾」が修了し、受講者14名が検討してきた3つの地域振興プランを発表した。
すわ地域おこし塾が3つの地域振興プランを作成
すわ地域「おこし塾」は、当所と法政大学、信州大学が地域活性化の人材育成を目的として、諏訪地域の社会人向けに受講者を募集。地域振興プランの作成を目指し、平成20年11月から毎週、専門の講師から先進事例や理論を学んできた。
1年半の講義を終えた3月29日にRAKO華乃井ホテルで修了式を行い、①街中のにぎわい、②観光振興、③製造業の高度化をテーマに作成した地域振興プランを発表した。
諏訪市長をはじめ各地域行政担当者等を招き、14人の受講者が実際に検討した3つの地域振興プランについて、塾長を務めた尾羽沢准教授(法政大学大学院政策創造研究科)が説明した。
地域振興プランの概要
①街中の賑わい創出
街中の賑わいを検討してきたグループでは、地域の顔である上諏訪駅周辺の賑わい創出について検討。「愛すべきふるさと、諏訪圏の顔である上諏訪駅周辺に元気とにぎわいをとり戻したい!」と、実地調査や周辺住民にアンケート調査を実施し、様々な角度から現状の問題点を細部にわたって探り、にぎわい創出の手段として「諏訪オープンカフェ(仮称)」を提案した。
オープンカフェでは4つの機能(図1)を担うため、オープンスペースと学習スペースを提供するのと同時に、地域参加型を実現するために、地場産物・お土産(地元の酒・味噌・寒天・氷餅など)・店舗で出す試作や宣伝のための 試食・販売コーナーを設置。地元の食材を使ったおすすめ
レシピを地域のお母さん達から募集するなど、地域住民とコラボレーションする中で、新しい産品創造を目指す。
この提案については、今後、詳細なビジネスプランの作成を行い、実現に向けてさらに検討を進める予定となっている。
②観光振興
観光をテーマに検討してきたグループでは、当地域のSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)により、課題を洗い出し活性化に向けた指針(図2)を作成した。
切り口となる取組として「偉人探しの旅」や「サイクリング・アドベンチャーランド」、「かたつむりの道」といった独創的な名称で、「冒険や探検」などの好奇心を掻き立て、人をひきつけるプランを提案した。
これは、今まで個々の観光スポット、観光施設や宿泊施設、歴史的資源などのPRはあっても、地域が一体となって外から人を迎え入れていこうという機運がなかった内向きな地域の姿勢に風穴を開け、諏訪地域の良さを全国に発信することを目指している。
今後は、運営主体をより明確にし、事業計画書として、現実的な計数計画を入れたプランづくりを検討する。
図2 観光の活性化に向けた指針
1.ネタは小さくも辛抱強く継続することで、観光・コミュニテイへのインパクトが強まる。
2.色々な観光客・住民のニーズに個別対応できるよう、コンピューター管理を導入。
3.6市町村を含む諏訪圏を横断的に連携をする。
4.運営費は受益者負担を原則として、公益性感覚の濃度を高めた。
5.第2次産業の軟化に伴い、サービス経済化の方向へ舵をとる。
6.観光開発は常に地域コミュニテイの発展も考慮することにした。
7.合理的思考が強い地域であるので、文化・芸術面への道を開拓する。 |
③製造業の高度化
製造業の高度化をテーマに検討してきたグループでは、精密産業から未来の地域産業を創造するプランについて提案した。
現状分析と併せて、当地域のものづくり産業発展の歴史を振り返ると同時に、統計資料から工業事業者数や人口予測、高齢化社会の進展といった近い未来を予想。諏訪地域の将来像を描く中で「少子高齢化への対応」を克服するために、解決の方向性として3つの柱(図3)をあげ、「クオリティオブライフの追及」を核とする新たな魅力構築を提案。医療・介護に関する製造業振興を中心に住環境整備、魅力ある都市づくりを目指す『ウェルネスすわモデル』を提案した。

尾羽沢塾長は、修了式のあいさつで、「プランを実現するためには、今後NPOを立ち上げるなど地域での取り組みが必要」と述べ、今年度も引き続き当地域の人材育成に取り組んでいく考えを示した。
すわ地域「おこし塾」から諏訪地域への提言
1.地域の顔である上諏訪駅の大改修
・橋上駅にして東西に改札を
・東西の回遊性を高める
・表示板、案内所機能の充実
・訪れた人が楽しめる駅、駅前に
・まるみつ、スワプラザのリノベーション
・駅前広場の機能・用途の検討
・観光客を意識した空間演出を
2.駅周辺ににぎわいを
・国道沿いや末広町などのシャッター街を、企画コンペ方式などにより活性化
・新規事業者が参入しやすい制度設計(低家賃など)
・おこし塾塾生、NPOなどを中心とした街づくり構想
・コアとしてのオープンカフェの早期実現
・歩いてみたい街、訪れてみたい街、入ってみたい店を演出
3.観光都市「SUWA」の実現
・海外からも訪れてみたい街に
・戦略的なディスティネーション・ビルディング
・徒歩、自転車、公共交通機関で楽しめるネットワークの設計
・サイクリングロードの早期整備、トライアスロン大会の実現可能性検討
・地元観光業者、住民、行政が一体となって「おもてなしの方法論」を研究
・魅力ある遊歩道の官民一体となった整備
4.未来都市「SUWA」の実現
・ウェルネスすわ推進協議会の発足と産学官医工連携コーディネーターの育成
・東バル跡地の高度活用方策の早急な検討
・諏訪製造業のシーズ、現代の社会ニーズをマッチさせた新しいタイプの産業クラスターの形成
・おこし塾製造業班のメンバーなど、若手実務者によるワーキンググループの発足
5.提言実現のために
・おこし塾の継続と人的ネットワークの拡大
・地域おこしを本務として活動するNPOの発足
・NPO職員人件費、運営費の確保
・産官学民の検討協議会の発足
・6市町村それぞれの発展計画の検討と6市町村間の連携・協力
法政大学大学院政策創造研究科 すわ地域おこし塾長 尾羽沢信一 諏訪地域「地力・知力」人材育成講座 最終報告会資料 2010年3月29日より